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オールドボウとの違い Part1-弓毛のテンションについて



ここ一年ぐらいずっと考え続けていることの一つに弓毛のテンションがある。きっかけはビオラの弓だ。バイオリンに比べ楽器のテンションが低いわけで、それに合わせる弓の毛のテンションをどうするかを色々と試している。弓を作る側には想定している張力がある。昔の古い弓の使用感や雰囲気が異なるのはそのせいもあるのではないかと思う。バロック期からシュポアの時代ぐらい迄はバイオリンの弓毛の本数は90本からせいぜい110本ぐらいで、トルテも同等のテンションをかけて弓を製作していた筈だ。ロンベルクのチェロ弓やドラゴネッティーのバス弓がどうであったのかよくわからないが、おそらくバイオリンと同じように毛の本数が少なかったとすると今の基準より50本以上少なかったはずだ。今日、多くのメーカーが製作工程で使う鉄製のワイヤーやアーチェリーのコードとは異なるテンションで弓が張れるようにしていた筈で、使用感の違いはこのことにもあると思う。


もし演奏性能の一部でも数値化を目指すのであれば、弓毛のテンションを測る必要がある。製作過程において材料の比重を量ったり、ルッキ値やスティックの縦荷重を測ったり皆色々やるが、実際に弓を弦に置いて奏者が感じる弓の力や抵抗はまた別のものだ。どのぐらいのバネである反りを入れるのか、またどのぐらいの力で(弓毛で)弓を引っ張るのかで奏者が感じる抵抗は大きく変わる。完成した弓の評価をする方法についてはノーマン・ピッカリング(Norman Pickering)やジョーゼフ・レイ(Joseph Regh)といった研究者達が長年取り組んできたが、手仕事や感覚を矜持とする文化が弓作りにはあって楽器に比べ演奏性能の研究は進んでいない。


出典:Violin Bow Playability a Players View/Joseph Regh

“Use your eyes” ヘッドの角度を測る為に角度計を使っていた時にマット・ウェリングに言われた言葉だ。スターウォーズの「フォースを使え、ルーク」というオビワン・ケノービの言葉のように頭の中でエコーして離れないが、毛のテンションぐらい測ってみようかなと思い立ち治具を作り始めた。古い弓のテンションを色々と測ってみたい。


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