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バイオリンの構えについて Part3-ニコラ・マッティス



“背が高く大柄で長い弓を使い、バイオリンをあばらに当てて構えた”

“あんな姿勢で演奏が出来るとは多くの人が信じなかった” 

―ロジャー・ノース



 極端に低い構えで当時においても賛否両論であったらしい。1670年代にアルカンジェロ・コレッリとは異なる構えでバイオリンを演奏していた人が、ナポリからドイツを経由してイギリスに渡り人々の耳目を集めた。二コラ・マッティス(Nicola Matteis 1650~1714)である。弓の歴史を調べはじめた当初、イタリアンスタイルと呼ばれる弓が何故イギリスに多くのこっているのかよくわかっていなかった。当然背景には音楽家の往来があり、富があって音楽家を支えるパトロンの存在がイギリスにはあった。一般的なロウ・ホールドより更に低い構えで演奏し、イギリスで自身の奏法を伝えた。当時伝記を執筆していたロジャー・ノースによれば、マッティスはそれまでイギリスで主流であった弓毛に親指を添えるフレンチグリップから弓の棹を持つように指導し、イギリスにおいてフランス音楽からイタリア音楽へと流行りが変わっていくのもマッティスがイギリスに来た頃からだという。若かりし頃にマッティスの演奏を聴いて以来ノースはマッティスに傾倒し、トリルについてマッティスのゆっくりとしたトリルの方が他の奏者の速いだけのトリルより音を止めないので良いといったことを書き残している。アシュモリアンミュージアムに伝わるソナタボウもマッティスの影響で作られた弓であったのかもしれない。(続く)


参考文献:Roger North on MUSIC edited by John Wilson Novello & Company LTD

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