アゴ当て
アトリエではしばらくの間、アゴ当てを深掘りしてみようと思っています。
きっかけは、とあるカナダから来たという方が真ん中につけるタイプのアゴ当てを探していらしたことですが、色々なアゴ当てを試すことは以前からやってみたい宿題としてしまい込んでいたものです。
アゴの形や、首の長さ、肩の形は人それぞれで、楽な姿勢を実現する為のセットアップは人によって違うはずですが、通常あれこれ考えるひまもなく(あるいは教えるひまもなく)「ラララララッラ・・・」とレッスンになだれ込みます。
アゴ当てを変えることで、音色や音量が大きく変わりますが、ここではまず自分の体に合ったアゴ当てを選ぶことについて見て参ります。
体に身に付けるものでは、足の形に合わせて靴を作り、洋服も寸法を測ってのテーラーメイドが一般的です。一方バイオリンはもともと付いているアゴ当てにまず奏者が合わせていくのが普通です。
肩当てを変えてみたり、ハンカチを挟んでみたり、或いは構え方を変えて色々試しはするのですが、「どうもしっくりこない」という方は多いと思います。
バイオリンを続けているうちにいつの間にか首にバイオリンだこが出来て自然な構えを覚えるものですが、これは靴ズレと同じようなもので、自分に合ったアゴ当てを使っていないことが考えられます。なによりも早い段階で自分に合ったアゴ当てと肩当てを使ったほうが上達は早いでしょうし、体に負担をかけずに長い時間弾けるようになります。
ドイツの講師の方がとてもわかり易いアゴ当ての選び方をネットにアップしていたので紹介いたします。
参考 6steps to select your ideal violin or viola chinrest and play comfortably
1.アゴの位置
まずはじめにアゴのどの部分をアゴ当てに載せればいいのか知っておく必要があります。英語ではアゴ当てをChin restといいますが、実際にアゴ当てに載せる箇所はChin(アゴの先端)ではなくアゴの先端から骨の角にあたる“えら”の間の箇所を載せます。
この際、アゴ当てに力を込めて押さえつけるのではなく、左手でバイオリンのネックを支えなくても(左手を離しても)頭をやや傾けて自然な頭の重みだけでバイオリンを保持できる状態になくてはなりません。
2.構えとバイオリンを載せる位置
次に鏡の前に立ち、バイオリンを普段構えるようにアゴの下に持っていった場合にどの位置にアゴがくるのかを観察してください。これは構えのスタイルや体形によって異なるのでご自身で見つけなければなりません。
もしバイオリンの左側にアゴがくるようであればガルネリ型のアゴ当てがありますし、バイオリンのセンターにアゴがくるようであればフレッシュ型のアゴ当てがいいでしょう。大人になってバイオリンをはじめた方はセンターアゴ当てが好きという方が多いようです。
左:ガルネリ型 右:フレッシュ型
3.アゴ当ての形状・でっぱりがあるかないか
次にアゴ当ての形状を見て参ります。アゴの輪郭がはっきりしている方はアゴ当ての縁にでっぱりがあるタイプのものを使うと縁がアゴの下にフィットして安定してバイオリンを構えることができます。アゴのラインがフラットな方はアゴ当てもフラットなものを使うと良いようです。
4.正しい高さか
首の長い方やなで肩の方は少し高さのあるアゴ当てを使うと良いでしょう。高さの全てを肩当てで補おうとするとバイオリン自体の高さが上がってしまうので弓を高く構える必要があるからです。通常3cm、4cm、5cmと多くのタイプで異なる高さのものが販売されているので自分にあった高さのものを選ぶと良いでしょう。
5.材質について
素材によっては滑りやすかったり、吸水性があるもの、肌触りがよいものなど色々な種類があります。プラスティックや黒檀、ツゲなど様々な素材のものがあるので色々試してみてください。
6.アゴ当てと肩当てのコンビネーション
肩当てを必要とするのか、要らないのか、どのような角度や高さがいいのかなど、組み合わせが色々と考えられます。
「もうこのアゴ当てで慣れている」という方にも様々なアゴ当てを試すことをお勧め致しております。
姿勢や構えが大きく変わるので演奏や構えについて新たな発見があることと思います。