top of page

弓とバランス Part2ーバランスポイント



弓のバランスポイントを見つける方法は至って簡単なので、是非ご自身の弓を引っ張り出して一度やってみて頂きたい。


弓の毛を上に向けてスティックの背中を人差し指を支点にして保持し、天秤のようにバランスを保つことが出来る箇所、それがその弓のバランスポイントだ。バランスポイントから(アジャスターのボタンを含まない)スティックエンドまでを測る方法と、バランスポイントから金属のフルール先端までを測る2つの方法がある。


一般的にバイオリンの弓では前者で24.2cm、後者で18.5cmがバランスの中央値とされている。チェロ弓の中央値は17cmである。バイオリンの弓で19cmだとやや先重、20cmだと先重と言えるだろう。一方、バランスが中央値より軽い18cmだとやや手元寄り、17cmではだいぶ手元寄りということになる。


実際の重量は軽い弓であっても、バランス的に見て先端の重い弓は重く感じ、重い弓でも手元寄りのバランスであれば演奏者は軽いと感じる。先端が重すぎても軽すぎても弾いていて操作性が悪く、疲れてしまうので自分に合ったバランスの良い弓を使うべきだし、バランス調整を試してみるべきだ。


とはいうものの、バランスの中央値は一つの基準に過ぎず、実際に弓を選ぶ際に多くの人は自分が慣れ親しんだ弓と同じバランスの弓を選ぶ傾向にある。あるソリストのNさんの弓は18.5cmであったのに対し、Hさんの弓は19.5cmであった。演奏のスタイルや体格などでもベストなバランスは異なるのだろう。


ラッピングなどの後から加えるおもりを全て取り払った、弓固有のバランスを決めるファクターの一つとして挙げられるのがモーティス(ほぞ穴)の位置である。


古い時代に作られた弓ほど、スティックのエンドに近い位置にモーティスがあり、時代が新しくなるにつれて徐々にヘッド寄りに作られるようになる。

トゥルトの弓でスティックのエンド(ニップルを含まない)からモーティスのエンドまで約16mm、プカットで約17mm、サルトリーで約19mmとフロッグの位置が時代ごとに徐々にヘッド寄りに移動していることがわかる。


写真にある弓はゴーラの弓で1830年頃に作られた弓である。ゴーラは当時まだバロックスタイルのオープンフロッグで弓を作っていたが、モーティスの位置はプカットとほぼ同じであったことがわかる。


演奏家のニーズは更に変化し、後期サルトリーの弓で完全に手元寄りのバランスになる。

現在のメーカー達は古い弓のオマージュをしたりしているので、モーティスの位置は様々である。意外にも(自分が見た限りでは)ギヨームなどのメーカーはトゥルトのように手元に近い位置にモーティスを持ってきているようだ。


バランスポイントやモーティスの位置など設計に着目して弓を見ていくのも面白いのではないだろうか。

bottom of page