機械的な引っ張りテストの結果がほぼ同じであっても、毛のキューティクル、テクスチャーや毛に含まれる水分や油の含有量のようなものの違いによって、運弓の時に感じる抵抗が大きく変わる。指を毛束に通した時に引っ掛かりを感じる毛があるが、そんな弓毛は普段の感じで運弓が出来ないぐらい一弓が重い(引っ掛かりが強い)とあるチェロ奏者の方が先日話していて、それを聞きながら麺をふと想像してしまった。細麺なのか、太麺なのか、ちぢれているのかストレートなのか。湿度変化に敏感な毛とそうではない毛があるので麺の多加水か低加水かといったことにも置き換えて比較が出来るなぁ、などとあれこれ考えてしまう。使用前に中性洗剤で洗うと良いとか、脂質を全て洗い流してしまうのはかえって良くないとか工房によって色々と言うことが異なっているが、結局は弓毛ごとに判断するしかないのだと思う。湿度変化に敏感でない毛はキューティクルが閉じていることが考えられ、何かを含侵させている場合もあると思う。また無漂白だといっても加工の初期段階では汚れを落とす為に洗剤は使っているわけで、過程でアルカリ成分に触れていれば毛の表面のキューティクルは開いて松かさのようにガサガサに毛羽立っている。よく水で濯いで乾かせば またキューティクルは閉じるというが、その辺の具合がトレードシークレットなのかもしれない。自分がバイオリンやヴィオラ弓に張って良いと思うのは適度に湿度によって伸び縮みする毛で、キューティクルもやや開いていると思われるものだ。伸縮が激しく、キューティクルが開き過ぎているのも普通の演奏を好む人にはあまりよろしくない。いつかキューティクルの状態についてもっと詳しく調べてみたい。
top of page
bottom of page