The Italians still have, for the Instruments and for those who touch them, the same advantage that they have over us, for the voices and for the people who sing. Their violins have thicker strings than ours, they have much longer bows, and they know how to draw more sound from their instruments than we do. For me, the first time that I heard the Orchestra of our Opera on my return from Italy, the idea of the strength of these sounds which was still present to me, made me find our violins so weak that I thought they all had mutes. (François Raguenet, Paralèle des Italiens et des François en ce qui regarde la musique et les opéra:p103-104)
1697年にフランスを旅立ち1698年までイタリアを旅したフランソワ・ラグネ(1660-1722)はフランス音楽とイタリア音楽の違いに驚嘆し、帰国後その違いについて記した本まで出版している。イタリア音楽は荒削りで力強く疾走感のある演奏であったという。はじめの印象ではフランスのバイオリンの方が繊細で優れていると感じたようだが、旅を終えていざ自国に帰ってみると全てのバイオリンにミュートが付いているかのように弱々しく物足りなく感じたと記している。音の違いがどこからきているのかというと根本的には文化と風土に根差した“イタリア的なもの”であり、技術的にはラグネの観察にあるように太いゲージのガット弦と長く重量の増しつつあった弓であった。太いゲージのガット弦を力強く鳴らす為には弓にある程度の強さと重量がなければならず、当時フランスで使用していたような細いゲージのガット弦ではその強さと重量は必要とされなかった。18世紀の楽器のセットアップでは、ストラディバリの最晩年である1730年代には早くもベニヤを貼ったものではない黒檀の指板が存在していたという。(続く)