VSA(The Violin Society of America)の会場で重鎮のステファン・トマショーに会って色々話を聞くことが出来たこと、嬉しい限りである。「Continue on」「続けなさい」と何度も口にしていたが、昨今のパンデミックやCITESのこと、ゴールを迎えつつある自身のキャリアのことなど色々思うことがあったのかもしれない。
コンベンションの期間中にパナマではCITESがあり、ペルナンブーコの規制についても話し合われた。どうやらペルナンブーコはカテゴリー1になることを免れたようである。先日行われたCITESの植物の会合では、ブラジルを含めた数か国でワーキンググループを作り注記する内容を決めることになり、数日内に今後ペルナンブーコがどのような扱いになるのかが判明する。緩和的なEU案と引き締めを一歩進めた米国案のいずれになるのかによって、業界の在り様が大きく変わるので行方を注視している。
同時期に行われたVSAコンベンションでのプレゼンテーションでは、代替材の普及やその使用を受け入れる土壌を業界内に作っていこうという呼びかけがあった。マメ科のカタロックス(Katalox、Swartzia cubensis)や竹を使った弓はいずれも弾きやすく、将来的に規制が進むにつれて様々な材料で作られた弓が増えていくことを予感させる。何にせよ時計の針は着実に進んでいるのであって、弓作りは今までとは異なる段階に入ったことを改めて実感するのである。