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ペルナンブーコと比重


修復で新たに材料を足さなければならない場合、きっとオリジナルの弓に使われている木と同じ比重の材料を使ったほうが良いに決まっている。そんな訳で依頼主に断りを入れた上で弓の比重を量らせてもらうことがある。同じような木目と色をしていて、更に比重が同じであれば具合がいい。なんてことはなく、ポチャッと水に入れて体積をみるのである。誰もが学校で習ったアルキメデスのあれである。幸いペルナンブーコはバイオリン本体の材料とは違い、水をほぼ吸うことがないので、新たに弓を作る際にもこの手法で木の選別をする。そんなことを繰り返しているうちに、メーカーごとの比重表が何となく出来てくる。いつかは修復や鑑定の一助になるようなものをまとめてみたいと思う。昔の古い弓の多くは1.04である。水を1とするので、1未満の軽い材料は浮いて、1.3に近い特に重い材料は勢いよく沈む。1.04という材料は水に入れるとややゆっくりと沈む。昔の職人たちがどのような手法で材料の選別をしていたのかは知らないが、叩いて音をチェックする他におそらく材料の比重を大まかに水に沈めて見ていたに違いない。


材木商によって持っている材料の特徴や質が大きく異なる。赤く詰まった材料を多く扱っている業者もいれば、少し粗く明るい色をした材料を主に扱う業者もいる。前者の材料は現在活躍する多くのメーカーが使用している材料で、後者の材料は後期のサルトリーなどがよく用いた材料である。これが木の種類によって生まれるものなのか、土壌や育った環境によって生まれたものなのか専門ではないので自分にはよくわからないが、とにかく材料にはいくつかパターンがあって比重も異なる。ペルナンブーコ州のレシフェで採れた材料は赤黒くダークブラウンのものも多くあり、材料として最も優れていると思う。遺産を相続する際に、インベントリーとしてどのような材料をどれだけ持っていたのかなどということがわかっている場合もあるが、当時の職人たちがどこで材料を買っていたのか、いつかその辺の記録が出てきたら非常に面白いと思う。自分としては、いつの日かマタ・アトランティカの森に生えているという木を見に行ってみたい。

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