top of page

トランジショナルボウ Part1-ドッドについて


フランスのレオナール・トゥルトが最も多くの形の異なる弓を作ったメーカーだと思う。父親から受け継いだパイクヘッドのバロックボウやイタリアンスタイルのバロックボウを作り、クラマータイプのトランジショナルボウを経て、後には弟と共にモダンボウを作るのである。フランス革命などもあり激動の人生であったに違いなく、今の自分には想像もつかない。


もう一人私がここしばらく見つめているメーカーはイギリスのドッドで、彼も多くのモデルを遺したメーカーである。イギリスには海の向こうから数多くの音楽家がやってきて、彼らの持ち込んだ弓や要望が弓作りに大きな影響を与えた。トゥルトとドッドが同時期に同じような弓を作っていた不思議について話題になることがあるが、パリでトゥルトに向けてしていた話を演奏家たちはドーバー海峡を渡りドッドなどイギリスのメーカーにもしていたのであって、彼らの持っていた弓に触れる機会も多かった筈だ。ヴィルヘルム・クラマー、ヴィオッティーをはじめ、後にドラゴネッティ、シュポアやパガニーニも海を渡っている。トランジショナル期は音楽家と職人が一緒に様々なアイディアを次から次へと実験した時期であり、特にイギリスのメーカーは好奇心が旺盛で様々な材料や形を試している。おそらくイギリスのメーカーが最も多くの樹種を試したのではないだろうか。


レースウッド

レースウッド(Lacewood)という木がある。斑紋の美しい中南米原産の材でまたの名をレオパードウッド(Leopardwood豹の木)といい、昔から家具やギターに多く使われている。ドッドや、イギリスのメーカー達はこのレースウッドやサティーネなど様々な素材を試している。レースウッドの平均的な比重は0.7~0.8程なので、ペルナンブーコやアムレットで作った弓に比べ仕上がりはやや太くなる。レースウッドで作った弓はしなやかで音もいいがフランスやドイツで使われた形跡はなく、イギリスで主に使われたようである。


トランジショナル期にドッドは幾つかのヘッドのパターンを試しておりそれぞれ演奏性能が異なっていて面白い。


続く

bottom of page