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オープンとフォーカス



スラックライン:Steffen A. Frost, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

モダンボウとクラシカルボウ以前の弓での大きな違いは、フルールとヘアスプレッダー(木のクサビ)で毛束をがっちり挟んで固定したことにある。音はフォーカスし、レスポンスが上がり、とんだり跳ねたりがしやすくなる。これに似たような事象に修理をしていても出くわすことがあって、木々の間に張ったスラックラインをその都度思い浮かべる。ラインのテンションが緩くダルダルであれば、人はその上で跳ぶことは出来ない。 


オープンフロッグ

古い弓ではネジ穴が拡がる、或いはスティックとフロッグの摩耗などによってフロッグの合わせにガタがあり、そのことがオープンフロッグのように緩いテンションとオープンな音色に繋がっていることがあると思う。修理でメネジを交換したりネジ穴をブッシングしてフロッグをスティックに固定すると、音はフォーカスしてその場を満たすようなオープンな音が失われることがある一方で、とんだり跳ねたりは俄然やりやすくなる。一般的にフロッグのガタは弓の保存の観点から無いほうが良いに決まっている。フロッグが左右にガタガタと振れる状態で放置しておくとアンダースライドの際から亀裂が入り、黒檀が割れてアンダースライドもひしゃげていくので、フロッグにガタつきがあった場合には取り敢えず修理することをお勧めしている。ただ音色を気に入って弓を手に入れた人がほとんどなので、音色が多少変化するかもしれないことについて説明に苦慮することもある。楽器本体程の緻密な音響システムではないものの、弓もその一部であって僅かなことで音は変わる。弓の精度や機能性と音色を実現できるようなシステムがいつかできれば面白いと思う。 

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