Tさんはご自身の所属するバス弾きのコミュニティー(?)を呼ぶ際に、“コンバス界隈”と言うのである。“バイオリン界隈”や“チェロ界隈”などというものは聞いたことがないのでコントラバス特有の世界観であるに違いない。
コントラバス奏者ほど型に囚われず自由な人達はいない。改造や楽器のDIYも当たり前、何でもありの世界である。弓の重量にしたって120gmの弓がある一方で140gmの弓もある。20gmの差は他の楽器で例えればバイオリンの弓でチェロを弾くようなもので一見何とも乱暴な話であるが、実際どちらも弾きやすかったりするのでよくわからない。彼らの飽くなき好奇心と改善への欲求は奏法の垣根も越える。オーバーハンドのフレンチボウにジャーマンボウのフロッグをつけてアンダーハンド仕様にする改造が横行している。これが何とも弾きやすいではないか。元々そのような仕様で作れば良い気もするが我々のアップデートがいまだ成されておらず、見ることがない。水陸両用車のようにフレンチ、ジャーマンどちらでもいけるように作られた弓も昔からあって面白い。
チェロ弓でバイオリンを弾くような自由な発想はスタンダードが出来上がってしまったバイオリン界隈ではなかなか難しいが、きっとやっていないだけでまだ見ぬ改善や弓奏の在り方は山ほどあると思う。