構えは興味の対象として何となく調べていることの一つである。様々なセットアップや弓の長さを考える上で楽器の構えをまず決める必要がある。バイオリンを鎖骨より下で構えていたのか、上であったのか、そして顎を使っていたのか否か。画家のアントン・ドメニコ・ガビアーニ(Anton Domenico Gabbiani 1652~1726)やピエール・レオーネ・ゲッツィ(Pier Leone Ghezzi 1674~1755)などが描いた絵画や風刺画、そして当時の文献を基に個々の音楽家の構えに迫ろうという試みが以前より為されていて面白い。弓の長さやバイオリンのネックの太さ、指板の幅や厚みはバイオリンをどこで構えていたのかで変わる。鎖骨より下に構えるロウ・ホールドであれば太いネックや厚い指板はポジション移動時に効果を発揮するが、鎖骨より上のハイ・ホールドでポジション移動時に顎を使うのであれば必要以上に太いネックや指板をつけるメリットはない。
研究者のペニー・シュワルツ(Penny Schwarze)がバイオリンの構えについての文献を年代別にチャートにしたものを見ると、18世紀前半まではロウ・ホールドがじつに一般的であったことが分かる。コレッリやビーバー、シュメルツァーなどの構えも文献などの記述から判断してロウ・ホールドであったという説が有力である。
参考文献:Journal of The Violin Society of America
Summer 2007 VOLUME XXI, No.1 P. 186
(続く)