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バイオリンの構えについて Part2-コレッリ

“コレッリは一弓で2本の弦を同時に弾いて、オルガンのように均等で力強い音を10秒間弾き続けられなければ自身の楽団の奏者として認めなかったという。そしてこの時代の弓は20インチ(50.8cm)を超えるものではなかった(弓毛の使用範囲)。”


ジェミニアーニが教え子に師のコッレリについて語ったことである。これをショートボウでやるには弦に沈み込むような弓毛のテンションと縦方向への圧力が必要で、楽器の構えはロウ・ホールドのほうがおそらく自然でやりやすい。コレッリ本人がバイオリンを構えているとされる絵画表現は、“へのへのもへじ”に毛が生えたようなものしか遺っていないが、いくつか存在していることがわかっている。当時の人が残した落書きに至っては、「これをよくぞ見つけたな」(そしてよくこれを証拠として出したな!)というものであって研究者の執念に頭が下がる思いである。


1点目はゲオルグ・ムッファト(Georg Muffat 1653~1704)がかつて一糸乱れぬ演奏と表現し、ローマで聴いたであろうコレッリ楽団のコンサートでの光景を描いたものだ。この版画は1687年にあった演奏を記録したもので、コレッリはこうした大編成での演奏をパラッツォ・パンフィリ(Palazzo Pamphili)にて1687年9月から1690年11月まで率いている。時に150人を超えるものであったといい、皆胸に楽器を押し当てるロウ・ホールドで、手にしている弓はアウトカーブしたショートボウだ。コレッリ本人は左端の台にのっているいずれかである。


もう一点は1669年出版のジョバンニ・マリア・ボノンチーニ(Giovanni Maria Bononcini 1642~1678)の本にジョバンニ・ピストッキ(Giovanni Pistocchi)という人が描き残したコレッリの姿を写した落書きである。真に際どい絵ではあるが楽器を胸に押し当ててネックは前方に、前下がりに構えていることがわかる。


様々な記録に残る事柄から判断して、コレッリは完璧主義であったに違いなく、おそらく教え子にもそうであることを求めた。ジェミニアーニがそうだったようにコレッリに直接教えを受けた人達はきっと皆、ロウ・ホールドであったのではないだろうか。

(続く)



参考文献・写真: Music in Art XXXIX / 1-2 (2014)HOW MIGHT ARCANGELO CORELLI HAVE PLAYED THE VIOLIN? CHRISTOPH RIEDO Musikwissenschaftliches Institut, Universität Freiburg/ Schweiz

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