当時誰もが認める高名なバイオリニストであったアントニオ・モンタナリ(Antonio Montanari 1676~1737)は、ゲッツィの描写によればバイオリンをロウホールドで構え、長い弓をフロッグの下に親指を添えて保持しており、いわゆるフレンチグリップで弓を持っていた。同じ時代においても皆構えや弓の持ち方が異なっていて面白い。個人的に演奏が素敵であれば、どこに楽器を構えていようがどんなセットアップでいかなる弓を使っていようが気にはならない。おそらく昔もそうであった筈で、こうでなければならないとあれこれいうのは何か違うのである。「気の向くままに自由にやったらいい」そんな声が聴こえてきそうだ。
18世紀に入りしばらくして高音域を弾くことが多くなると、ロウホールドからハイホールドへ切り替えが進んでいく。ロウホールドのコレッリは晩年、ナポリにて他のバイオリニストが弾いていた高音域の一節を弾くことが出来なかったという。コレッリやモンタナリがこれを潮目の変化と捉えたか、退廃と捉えたか定かではないが、いずれにせよ18世紀中頃まではロウホールドで演奏する姿を見ることがあった筈だ。
参考文献:Journal of The Violin Society of America
Summer 2007 VOLUME XXI, No.1