2022年以降‟出自がよくわからない人“からのペルナンブーコ材の売り込みDMは久しく途絶えていたが、最近またちらほらと入りはじめたのが気がかりである。象牙がそうであったように抜け穴を探すような人は必ず現れるわけであって、そのようなことが続くと違法伐採を行う人を取り締まる為にペルナンブーコをCITESカテゴリー1に結局移行せざるを得ない時が来るかもしれない。‟出自のよくわからない人”にはおとなしくしていてくれと願うばかりだ。今のように単に弓や材料をブラジルから出さないようにすれば良いというわけでもない。現地を何度も訪れている弓職人のチャールズ・エスピーさんがCITESのレポートで述べているように、植樹や森の保全活動を現地で中心となってやっているのはブラジルの弓メーカーである。ブラジルには優れた技術を持ったメーカーがあり職人がいる。大半の人は違法伐採とは無縁であり、彼らの生活の糧を奪ってしまうと現地でペルナンブーコの個体数を増やすべく活動する人がいなくなってしまうのである。
”Know your bow”というキャンペーンをしばらく前にアメリカでやっていた。自分の使う弓の出自を知ろうというもので、違法に伐採された材料を使った弓は買わないといった啓蒙活動でもある。材料を消費する我々の問題でもある。個人的には普通にペルナンブーコの弓といって異なる物が出回る慣習をまず何とかすべきではないかと思う。昔から業界ではコンプライアンスのコの字もないのが常であったが、使っている原材料がそもそも違うのだから産地偽装などというレベルではない。亜種でも良い弓は作れるし、亜種の木材の価格も年々上がっているのだから何も今更ペルナンブーコを装う必要もないだろうとも思う。近年ペルナンブーコの亜種のサッパンやプラティローバが安価な弓となりペルナンブーコの弓として多く出回っているが、これらの材料は比重が1を超えることは滅多になく、着色をしていなければ色もオレンジ色より濃い色のものはない。特にプラティローバはペルナンブーコによく似ている為、弓に仕上がったものを見分けるのはとても難しいが、熱を加えて反りを入れたり直したりする際にペルナンブーコにはない独特の刺激臭がある。削る際にもペルナンブーコより油分が多いのかすぐに鉋やヤスリが目詰まりしてしまう、明らかに異なるものである。もう何年も前のことになるが隣の国の業者がユカタン半島で材料を買い漁っているとの話を大手の材木商から聞いた。いつか規制がかかることだろう。別の樹種になるがイペも奇麗に仕上げればパッと見て見分けることは難しい。最近作られているイペの弓はイペときちんと言って売っているので亜種についてもそのようにすべきだと思う。判別には弓の値段も一つの判断基準になるかもしれない。現在、どんなにまとめ買いをしたとしても良質なペルナンブーコの弓材の値段が1万円を下回ることはまずないだろう。原価計算をすれば数万のペルナンブーコの弓はまずありえない。嘘を言っちゃいかんよと思う。