ある夏の日、掛川駅で新幹線の車窓から黄色い鮮やかな花をつけた街路樹が見えた。よく見ると葉っぱや花がペルナンブーコそっくりではないか。下車して確認しようかと思ったがそんなことがある訳がないと思いなおした。掛川からは昔ブラジル移民が出ているので、あながち突拍子もないアイディアではない。ただおそらく自分がこの時見たものは、街路樹に多く用いられる黄焔木であったのではないか。
マメ科の植物は葉や花に特徴があって、ペルナンブーコのような黄色い花を咲かせるものが多くある。大航海時代にスリランカや東南アジア原産の黄焔木(Peltophorum pterocarpum)やマレー諸島原産のスオウの木(Biancaea Sappan)を見知っていた船乗りがブラジルでペルナンブーコを見出した話はよく知られている。そしてブラジル航路を見つける以前にヨーロッパの港を出港した船乗りや商人達が東南アジアでこれらの木を見出すことが出来たのは、おそらく南ヨーロッパ原産でマメ科のキングサリ(Laburnum anagyroides)が既に木材として流通していたからである。黄色い美しい花をつけるこの木はその昔バロックボウに使われていたことがある。「ああ、ここにもキングサリが生えてるのだなぁ」などと彼らは思った筈である。