ヴィオラの弓は、歴史を見ると他の楽器に比べ圧倒的に情報量が少ない。これには楽器の需要の推移や演奏の慣習が関係していると言われている。大雑把にみるとバイオリンやチェロと同時期に生まれたヴィオラは17世紀後半から18世紀中頃にはあまり本数が作られておらず、ヴィオラを全く作らないメーカーもいた。作ったとしても少量で、テクラー(Tecchler 1666-1743)やモンタニヤーナ(Montagnana 1683-1756)などはヴィオラを数えるばかりしか作っていない。本体がそのようであったから、弓の進化においてヴィオラの弓がフォーカスされることはまずなかった。19世紀においても多くのヴィオリストは小さめのヴィオラを使ったかバイオリンをヴィオラとして使うこともあって、バイオリンの弓をそのまま使うこともあったそうだ。この傾向はおそらく20世紀に入っても続き、バイオリン、ヴィオラ兼用の弓が長らく作られたようである。65gmぐらいの微妙な重量の弓を今でも見ることがあるが、このような事情もあるようだ。ヴィオラが一際輝きを増すのはやはりターティスやヒンデミット、プリムローズの時代からで、弓ではサルトリーが活躍した時代にあたる。
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