弓が曲がっている場合、何割かはフロッグとスティックの合わせに問題がある。多少弓が
曲がっていても演奏時に問題がなければ気付かない人が多いが、フロッグとスティックの
アラインメントが大きくズレている場合、見た目はさほど曲がっていなくとも自然な運弓
が出来なくなるので違和感を覚える人が多いと思う。正しい位置にフロッグがあるかにつ
いては、点検の方法として片目を閉じて、弓の背を自分に向けて真っ直ぐに立てて構えてみる。視線を手元に落としてスティックの両側から左右対称にフロッグが見えるように弓の角度を調整し、その状態を保ちつつ今度は視線を弓の先端に持っていき弓のヘッドがスティックに対し左右対称に見えるかをチェックする。もし左右対称に見えないようであればフロッグの取り付け角度がズレていることになる。フロッグがスティックに対し大きく傾いて付いている場合弓のストレートはまず出ないので、スティックに熱を加えてあれこれ修正をはじめる前にこれを何とかする必要がある。
通常新たにフロッグを作る場合、フルールを黒檀材に合わせて底面より仕上げていくが、古い弓に替えフロッグを作る場合はフロッグ上部をスティックに合わせることから始めることがある。古い弓では製作の過程でフロッグのアンダースライドを取り付けるミゾを彫る際に角度が大きくズレているものがあり、そのような場合にはスティックに取り付ける時にスティックを削って先端とのアラインメントを調整していた。このような弓に替えフロッグを作る場合、まずフロッグ上部のアンダースライドをスティックに合わせてから高さを決めないと、溝の角度調整をする際に高さが変わってしまうので先に合わせを済ませておく必要がある。
長年弓を使っているとアンダースライドと呼ばれる金具が外れることがあって、修理者が
それを何も考えずにパッと接着した際に角度が変わってしまい弓の精度が崩れていくなんてこともあるので、アラインメントはたまにチェックすると良いかもしれない。弓の修理でアラインメントが崩れている場合、スティックの手元八角部分は削ることは出来ないので、アンダースライドを外してフロッグの三面を少しずつ削り角度を変えて再接着してフロッグの取り付け角度を調整することもある。弓の先端のフェイスプレートについても交換の際に角度が変わらぬように注意すべきであって、ヘッドの底面とフロッグのフルールの底面が平行であることが望ましい。