かつて音楽家達が実際にどのような楽器を使っていたのか興味があるのは音楽学者や楽器商、製作家だけかもしれないが、使っていた楽器やその構え方を知ると歴史の遥か彼方にある彼らの存在が途端に質感を得て、奏でた音に一歩近づくことが出来たような気分になる。単にコレッリ(Corelli)と聞いても彼の音楽や肖像画が脳裏に浮かぶだけだが、「彼はアンドレア・アマティー(Andrea Amati)やマティアス・アルバーニ (Matthias Albani)を使っていた」となると今度は音や左手の感覚を想像する。現在と過去の状態を単純に比較することはできないが、オールドバイオリンを扱う楽器商の方やオリジナルの型を使って楽器を作っている方であればサイズ感や音まで想像できるだろう。当時はシュタイナーの楽器が人気であったことが伺えて面白い。
・ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー Heinrich Ignaz Franz von Biber(1644~1704)
使用楽器 ヤコブ・シュタイナー Jacob Stainer
・アルカンジェロ・コレッリ Arcangelo Corelli(1653~1713)
使用楽器 アンドレア・アマティー Andrea Amati マティアス・アルバーニMatthias Albani
・ヨハン・セバスティアン・バッハ Johann Sebastian Bach(1685~1750)
使用楽器 ヤコブ・シュタイナー Jacob Stainer
・フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ Francesco Maria Veracini(1690~1768)
使用楽器 ヤコブ・シュタイナー Jacob Stainer
構え方 首、或いは鎖骨に押し当てる
・ジュゼッペ・タルティーニ Giuseppe Tartini(1692~1770)
使用楽器 アントニオ・ストラディバリ Antonio Stradivari
構え方 テールピース右側に顎を載せる
・ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ Giovanni Battista Viotti(1755~1824)
使用楽器 アントニオ・ストラディバリ Antonio Stradivari
参考文献 David D. Boyden, The History of Violin Playing from its Origins to 1761